退去時のトラブル防止 賃貸

退去時のトラブルが多く1998年国土交通省にて【原状回復をめぐるトラブルとガイドライン】を公表しました。

原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すものではないということを明確にし、原状回復を「賃借人の居住、使用により発生し た建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるよう な使用による損耗・毀損(以下「損耗等」という。)を復旧すること」と定義

さらに2004年にて東京都において賃貸住宅紛争防止条例を施工。
通称東京ルールと呼ばれ上記の国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドラインと内容はほぼ同じです。

簡単に言えば通常に住んで自然に出来る傷等は入居者の責任ではないということを明文化されたものになります。

具体的な賃借人負担とはどのようなものなのか。

ガイドラインでは価値の減少を3つに区分しています。
借主が負う負担は③のみになるということになります。

①経年劣化 建物・設備等の自然の劣化・損耗等

②通常損耗 借主の通常の使用により生ずる損耗等

※冷蔵庫後部壁面に出来る黒ずみ(電気やけ)
※テレビ後部壁面に出来る黒ずみ(電気やけ)
※家具を設置したことによる床のへこみ
※画びょう ピン等の穴
※タバコのヤニ 換気扇の油汚れ(清掃で除去できる程度のみ)
※畳 クロスの変色(日照などの自然現象によるもの)
※ハウスクリーニング費用(特約がある場合除く)

③上記以外の損耗等 (善管注意義務違反、賃借人の故意・過失 その他通常の使用を超えるよう な使用による損耗・毀損)

◆善管注意義務違反については民法400条において他人の物を借りている場合には
借主は物件を明け渡すまでは相当の注意を払って物件を使用 管理しなければならないと規定されております。

◆賃借人負担になる通常損耗を越える使用損耗・毀損 参考一覧

※サビ 結露を放置した際のカビ シミには借主負担
※引っ越し作業やキャスター付きの椅子などを引きづった際についた傷 へこみは借主負担
※下地ボードの張り替えが必要な程度の穴(くぎ穴 ねじ穴)
※タバコのヤニ 清掃で除去できない汚れについては借主負担
※ハウスクリーニング費用(特約がある場合)

 

修繕義務が生じた場合においてどの範囲を修繕するのか

例えば畳に焼け焦げを作ってしまった場合には

借り主に責任がありますから、畳を交換する費用を負担することになります。

しかし、和室で1枚だけ畳を変えると、色が違ってしまって見た目が悪いという問題が生じます。

その場合、借り主はどこまでを負担すればよいのかは判断に悩むところです。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、このような場合を想定し

原状回復は、毀損等の補修工事が可能な最小単位を基本にするとしており、

畳であれば原則は1枚単位、壁のクロスは1㎡単位、ふすまは1枚単位、柱は1本単位などとしています。

しかし一カ所クロスを傷をつけた場合上記の考え方にて㎡単位が望ましいとしつつ全面張替え費用ではなく

一面分の張替え費用までの請求は妥当と考えています。

◆各 設備の参考
※室内クリーニング ・・・一式

※クッションフロア ・・・㎡
※フローリング   ・・・㎡
※畳        ・・・枚
※カーペット    ・・・㎡

※クロス      ・・・㎡
※押し入れ 天袋  ・・・箇所

※窓  ドア    ・・・枚
※網戸       ・・・枚

特約を結んでいる場合

契約自由の原則から契約内容は自由に当事者間において自由に決める事ができます。
しかし賃貸借契約において以下の3つを満たさないと特約が有効と裁判所が認めていません。

①特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
②借主が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識している事。
③借主が特約による義務負担の意思表示をしていること

賃貸借契約においてクリーニング費用の特約のトラブルは多いです。

原則は貸主負担ですが上記3つを踏まえて特約を結んだ場合有効になります。
またクリーニング特約においてはさらに以下の点において有効か無効かの判断になります。

①賃借人が負担すべき内容・範囲が示されているか
②本来賃借人負担とならない通常損耗分についても負担させるという趣旨及び負担することに
なる通常損耗の具体的範囲が明記されているか或いは口頭で説明されているか
③費用として妥当か等の点

有効の場合の特約例
「契約終了時に、本件貸室の汚損の有無及び程度を問わず
専門業者による清掃を実施し、その費用として2万5000円(消費税別)を負担する旨の特約」
(東京地方裁判所判決平成21年9月18日)
本件については借主にとっては退去時に通常の清掃を免れる面もあることやその金額
も月額賃料の半額以下であること、専門業者による清掃費用として相応な範囲のものであ
ることを理由に消費者契約法10条にも違反しないと判断しました

無効の場合の特約例
「ルームクリーニングに要する費用は賃借人が負担する」
一般的な原状回復義務について定めたものであり、通常損耗等についてまで賃借人に原状回復義務を認める
特約を定めたものとは言えないと判断したもの(東京地方裁判所判決平成21年1月16日)

➡上記凡例から見てハウスクリーニング費用については具体的に退去時にかかる明示が必要になるということです。
ハウスクリーニングは借主負担とする。費用は一律25,000円とする。
畳の表替えは借主負担とする。表替えは費用一畳当たり8,000円とする。 等

 

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